いちじしのぎ

生活から一時凌ぎで逃げては文章を書き、また生活に戻る人間の悲喜交交。あるいは、人生の逃避先「山」にまつわる話。

アボカド・トースト

風呂を沸かしながら、文章を書いている。年末だ。スーパーやドラッグストアではクリスマスソングがあっという間に「こがらし」になったし、元旦の営業はしませんよとのアナウンスが流れるようになった。年の瀬。今年が終わっていく。

 

長谷川潤がただアボカドトーストを作るだけの動画が好きで、今日その真似事をしてみた。レモンゼストだけが手に入らなかったから、ゆずで代用。苦味のある風味は一緒じゃん?てことで、これが大成功だった。

 

広いキッチンの隅に木を飾り、窓を開けて料理を始める。マルドンの塩を小瓶に移し、小麦酵母から作るカンパーニュを薄く切り分ける。アボカドは縦に厚くスライス、トーストしたパンにオリーブオイルを大さじ1/2塗り、アボカドを並べ、マルドンとペッパー、最後にゼストの皮を削りかける。

これでOK。真似をする。違うのはゆずだけだ。

カンパのすっぱい香りは柑橘系とちょうどよく、オリーブの香りと苦味は相性がいい。ねっとりとしたアボカドは塩気を帯びて旨味が際立ち、パンの香ばしさと口の中で合わさる。トーストはした方がいい。ゆずは香りもよかった。

離婚を経験し、人生のどん底だった時の顔と、それを克服し、ハワイの海に「20代の自分に言いたいこと」を涙ながらに語る長谷川潤の清々しさ。海や山を走る自由な風のように爽やかで、その人が作る料理には、余計なものが混ざっていない。

声には等身大の自信が込められている。「今のパーフェクト、アボカド・トースト」。