いちじしのぎ

生活から一時凌ぎで逃げては文章を書き、また生活に戻る人間の悲喜交交。あるいは、人生の逃避先「山」にまつわる話。

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ぬか床のような人

5年前から、ぬか漬けを始めた。タッパーと、その中にすぐに漬けられるぬか床が入っている商品を買った。それ以降、水っぽくなれば水を抜き、糠を足し、時に干し椎茸だの鰹節だのを投げ入れていった。 ぬか床を手に入れた当時はあまりに安い給与で働いていた…

再び、アボカドトースト

馴染みのパン屋で、カンパーニュを見つけた。 なんていうのか忘れたけれど、あの、木の葉みたいな模様があしらわれた大ぶりのカンパ。550円。持ち上げた軽さから、ぎっしり詰まっている感じはしなかっけれど、家からの散歩にちょうど良いここにカンパーニュ…

削られた山塊

湯沢ICを過ぎた時に、苗場山に登った時を思い出した。今年、ここに来るのは3回目だ。朝5時半を回ったところだったか。今回は日帰り。あれ、前回は、そうだ。プリンスホテルに泊まったのだった。 紅葉の頃の来たいと思っていた、巻機山。ある人はその山域をゾ…

違う道を通って、同じ場所に着きたい

東京の路地裏は、おしなべて別の誰かの生活路だ。私が普段通らない道を歩くのが楽しいのは、その道を歩いて生きる別の自分を想像するから。 このエリアに、この店の近くに、住んでいたらどんな暮らしを送っているのだろうか。建ち並ぶアパートの一室の電気が…

まっすぐな道を行く

東川町をつらぬくメイン通りは、どこまでも伸びて入るようだった。いつぶりかに乗る日産。運転を変わってくれる人は、今回はいない。乾いていてわずかに温度がある風が車内を抜けていく。 出張で札幌に用事があり、休み重ねて旅に出た。旅をする目的に「登山…