いちじしのぎ

生活から一時凌ぎで逃げては文章を書き、また生活に戻る人間の悲喜交交。あるいは、人生の逃避先「山」にまつわる話。

山形への旅/FINAL 「湯殿山」

f:id:loyalbravetrue:20220719225819j:image

舐めるとかなりしょっぱい温泉は、高濃度で「入浴は5分までにしてください」とのこと。大きな窓を開けて外気を入れ、1日のことを考えた。朝8時前。三川町の田んぼの中にある宿泊施設の小さな浴槽に浸かり、眠気を溶かしていく。

ミニッツメイドのグレープフルーツの缶ジュースを飲む。パッと荷物をまとめ、早々に宿を出た。目的地は、湯殿山出羽三山、最後の霊場。生まれ変わりの旅では「未来」を表す。

f:id:loyalbravetrue:20220719230700j:image

口外禁止、写真撮影も禁止。神域であったことは「語るなかれ、聞くなかれ」と言われているから、ここであったことは書かないでおく。

 

帰りには雨が本降りになっていた。月山道路に再び戻り、帰路に着く。

以前、大江町の食堂を取材したのを思い出し、途中で高速を降りて、その場所へ向かった。記憶とが一致せず、途中で迷ってしまい、道の駅近くのピザ屋に立ち寄った。マルゲリータ。塩気が効いていておいしい。

 

雨は止みそうにない。昨日、月山に登れてよかった。食後のコーヒーを啜りながらスマホを眺めていたら、後ろの客が、目的地だった場所について話していた。左沢(あてらざわ)のまちなか交流館が、正しい場所だった。そこの一階。記憶が正されたところで、店を出た。

f:id:loyalbravetrue:20220719231420j:image

山形に向かう前に混乱していた部分が、いくらか落ち着いた。薬を塗ったみたいだ。月山と湯殿山でお祓いを2度受けたからなのか、透明になったように感じる。あるいは、淀みが澄んだか。

今のところは、生まれ変わったような感覚は無い。たかが4日程度で聖人になれるわけが無いわけで、生まれ変われるかどうかは、今日以降の自分次第でしかない(なんと陳腐な結論)。

とはいえ、体はだいぶ軽くなったし、また泣けるようになった。「泣いたー」と言いながら涙が出て来なくなっていた自分は、月山の下山中にみた景色が洗い流してくれた。涙を流せるのは良いことだ。

食べ物をおいしく食べ、よく眠ることは最も重要だとも感じた。人をいつくしみ、苦しみを分かち、共に喜び、平静でいることも。これを惑わす人もいるけれど、

f:id:loyalbravetrue:20220719234001j:image

だが、私は弱い。すぐに達することは出来ないだろうが、少なくとも目指すことは可能だと思った。良く生きて、死を迎えたい。なにも後ろ向きではなく、そう感じた。

さて、明日からは元の生活に戻っていく。戻りながら、離れる準備を始めよう。それから、人に対してオープンでいながら、自分自身をいつくしむことも。

月末にはまた山を目指そう。山に入って過ごす時間が、本当に好きだ。