いちじしのぎ

生活から一時凌ぎで逃げては文章を書き、また生活に戻る人間の悲喜交交。あるいは、人生の逃避先「山」にまつわる話。

下山後の数日

瞭望合歡山群

山から帰ってきた後、生活がなんだか浮いているような感じがある。

毎回そうなのだが、帰ってからの数日が足元がふわふわしている。翌日から筋肉痛だのは引いていくのに、糸の切れた凧みたいな感じと言えばいいのか、落ち着かない。

そんな時に仕事のことを考える。今日は雨が降っていたから余計なのかもしれないが、気分も晴れなかった。

山についての知識を得たくて、朝のBGMがロングトレイルイカーの「たかくらや」さんのチャンネルになってる。登山靴の選び方からおすすめの名品まで、解説が経験ベースであるし、何かを引くときには出典をきちんと教えてくださるのが良い。気さくて飾らないお人柄なのが話し方なんかから滲んでくるし、楽しく聞いてる。お住まいは大阪、美濃のよう。いいな。

関西の山に登ってみたいと思っている。居住地の山を楽しみつくせているかと言えば返しにつまるのだけれど...。

**

唐突に話は変わるのだが、自分のことを余り物だと思っている節がある。今年は知り合いの結婚が続いたからなのかもしれないけれど。こういうのを自己憐憫というんだろうな。人生の節目を迎えられない。終わり、立ち止まりをポジティブに捉えられない。

昔はこういう積極性を否定していたのだが、たぶん間違っているなと思えてきた。引き受けられるポジティブは引き受けたい。

***

やるべきなのは英語の勉強ではなく、海外に行くことなのだろうと悟った。治療薬ができたら、スイスにでも行こう。マムートのマンモスのように、のっそりと切り立った山々を歩く。一人で部屋にこもって語彙を増やしている場合ではないのだな。

来年はだから、アルプスに挑戦したいのだ。その本場に行くために。たかくらさん(さっきのYoutuberの方)はニュージーランドを3000kmロングハイクされていて、その当時の経験が根付いている感じがすごいある。言葉の裏がしっかりしているのが、仕草、声のトーン、身の振り方に解像度高く表れている感じがするのだ。

たまたま新しく発見した知らない世界の住人に魅せられているだけ、なのかもしれないが、栃木にある百名山3座を見渡しながら飲んだ白湯が、出会ったことのない味だったような、山には何かあるのだと思う。それをたかくらさんは、自分の先輩たちは、知っている。

ほとんど好奇心のようなもので山に登っているのだが、その中で今日はクマの恐ろしさに触れた。あの黒い物体と出会わないように、たまに藤井風を歌いながら下から登ってくる空気を感じている。