いちじしのぎ

生活から一時凌ぎで逃げては文章を書き、また生活に戻る人間の悲喜交交。あるいは、人生の逃避先「山」にまつわる話。

03/10 粗ごし梅酒ロック, 03/11 The Show.

梅酒のロックを頼む。好んで果実酒のロックを飲んでたヤツの顔を思い浮かべる。この席にはいない。何かにつけて梅酒を飲むやつは。

ラスト1週間があっという間に過ぎ、ここの職員でいることもできなくなる。これまでの休日を美化して過ごす。会社の問題点を次でも同じような次元で考えるようになるのだろうか。その度に、甘い果実酒を冷たく飲むのかな。どうだろうね。また温泉に浸かり行きたい。

 

3/11。家の多くを占めた家具の大半は実家に運ばれた。声がよく通るようになった部屋に春風が抜けていく。いくつかの植物を新しく買いたい。

誰かと暮らすのを羨みながら、そうやって他人のことを考えると疲れる。どうせ疲れるなら、己の体に心からの疲労を味わってもらいたいものだ。山の上で感じられるような。

家具の搬出を手伝いに来てくれた両親と、ステーキ宮で昼ごはんを食べる。実家に顔を出していた取引先の男の子が辞めるという話。膝を悪くして、心身とも病んでしまったと。いい気がしない。

 

両親を見送り、私も追いかけて車に乗り込もうとする時、地震が来た時間が来た。

当時、家庭科棟でチューバを庇って、天井から降ってくる埃に崩落を覚悟した卒業したての高校生だった。北大には行けずどん底で、自宅浪人を決め兼ねていた時だったか。よく覚えてはいないが、抱いていたのはチューバだった。瓦礫の中をスクーターで駆けて帰った。

 

花粉がすごいなあ今年はと言えている今が穏やかだ。時間が止まったように、日中響いていた子どもの声はなりを潜め、洗濯物がはためく音だけが時折耳を打つ。

数秒だけ、北から流れてきた風を肌に通した。今年も海に祈る人たちがおり、原発を睨みつける人がいるのだろうな。

 

家からの帰り道、車内でクイーンを聴く。We Are The Champions. Somebody To Love. 有名な曲は中学時代に歌詞を覚えた。ベッドの中でThe Show Must Go Onを聴き直した。

人生が舞台ならば、まだそれは続く。続かなくてはならない。蝶のように軽やかに。だが、Made In Heaven. 神々のなすままに、私たちは何も作りえない。なんでショーだ。

 

早く寝ようと思ったらこんな時間。In the night, you hear me calling, you hear me calling. シャッフルで流れてきたのはOblivion. 私の呼ぶ声は、どこまで響くだろうか。